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2009.2.1 業界誌にKEENチーフ奈良が感動のストーリーで特集で取り上げられました。

先日、業界誌の「感動のストーリー特集」にKEENスタッフ・奈良の記事が4ページに亘り、取り上げられました。
お客様との強い絆をテーマに書かれたストーリーを、この場で紹介したいと思います。

 

東京・世田谷区の自由が丘近郊にある理容サロン『KEEN creative hair』で働くスタイリスト、奈良健史さんには今でも忘れられない“恩人”がいる。
今から5年前。オーナーの厳しい指導を受け、練習を重ね、ようやくカットデビューの資格を得られるテストにまでこぎつけた。
心は躍る。何せずっと憧れていた技術者になる試験だ。
しかし、奈良さんの心を曇らせる試練も同時に待ち構えていた。
それは「モデルハント」だ。
営業では差し支えなくお客様と会話することができるのだが、外で他人に話しかけることは得意ではない。
いや、むしろ自分から知らない人に話しかけることは苦手だった。
「社交的な人なら楽しんでやれるんでしょうけど・・・」
当時を思い出し、ほろ苦い笑顔を見せる奈良さん。
カットテスト前にもモデルハントは何度か経験していたが、声をかけようとしてかけられず、ためらっているうちに去っていってしまう。結局誰にも声をかけることができずに1日が終わることもあった。
今回はさらにハードルが高い。
テストで行うのが「ベーシックカット」だからだ。
刈り上げなど、最近の男性があまりしたがらないのがこのスタイル。せっかく勇気を出して声をかけても、断られることが多い。
奈良さんにとっては二重苦だった。
テスト前日、何人にも声をかけた。
しかし、モデルはなかなか決まらなかった。
やっと話をきいてくれる人がいても、「ベーシックカット」がどんなものか知ると断られる。
いよいよ夕暮れ時になり、「これはまずい」と焦り始める奈良さん。
モデルを用意できなかったら、2ヶ月後に行われる次の合同試験まで機会を逸することになってしまう。
「とにかく誰でもいいから見つけないと」
そう思ったとき、奈良さんの目の前に現れたのがTさんだった。
スーツをパリッと着こなす、40代の男性だ。
迷わず声をかける。
「すみません。ちょっといいですか?」
こちらをちらりと見やり、通り過ぎていくTさん。
これまでの経験のなかで、絶対だめな人というのは声をかけたときの反応でなんとなくわかるようになっていた。
どれだけお願いしても無理な人は「結構です」と最初からきっぱり断る。
だから無言だということは、可能性はゼロじゃない。
それだけを根拠に、奈良さんはTさんに追いすがった。
その必死さに押され、Tさんの足が止まった。
Tさんが話を聞いてくれる状態になった。
自分が何者なのか、声をかけた目的は何なのか、お願いしたいことをまくし立てるように話した。
話の中身はわかってくれた。真剣なのも伝わった。
それでもTさんは経験したことのないカットモデルを快諾せず、しばらく渋った。
ごり押しは好きではない。
できれば快く引き受けてくれる人が望ましい。
しかし、もう後がない。
必死にお願いしつづける奈良さん。
夕刻をとっくに過ぎ、空には月が昇る。
ネオンに照らされた奈良さんの顔は一層凄みを増す。
「何としても」という気迫が伝わってくる。
ここで断ると、もうこの人には後がないんだ。
それを感じたTさんは、モデルを引き受けることを了承した。
渋々ではあったが、悪い気はしなかった。
翌日、Tさんをモデルとして、カットテストが行われた。
オーナーの厳しい目が光るなか、試験は開始。
これまで学んだ技術をすべて出し尽くそうと、奈良さんは懸命に取り組んだ。
しかし、思ったように手が動かない。手順が、段取りが、頭に入っていない。
初めてのカットテストで浮き足立ってしまい、結果は散々だった。
いつも以上にオーナーには叱られ、仕上がりもイマイチ。
何より、そんな不甲斐ない自分を見て「Tさんはもう来てくれないだろうな」。
そう思った。
ただでさえモデルはなかなか2回目は来てくれないもの。こんな結果に終わってしまったのだから仕方ない。
帰りがけにTさんは「大変ですね。がんばってください」という励ましの言葉をかけてくれたが、うなずくことしかできなかった。
2ヶ月後、次のカットテストの日が近づいてきた。
モデルハントをしに街に出るが、案の定ベーシックカットでは誰も受けてくれない。
どうしよう。困ったときに、思い浮かぶ顔がある。
携帯電話を取り出し、恐る恐る緑のボタンを押した。
また来てくれるという。それも「ええ、いいですよ」と即答だった。
確かにこの間の出来はよくなかった。なのにTさんはまた来てくれる。
それからというもの、Tさんは奈良さんの強力なサポーターになった。
会社で用事があっても「じゃあ早く切り上げて行きますよ」。
プライベートの飲み会があるときでも、「途中で抜け出してきますよ」。
とにかくいつモデルを頼んでも快く引き受けてくれるようになった。
Tさんをモデルに何度もカットテストに挑戦した。
しかし、「あまり器用な方じゃないんですよ」と自分で話すように、奈良さんは何度も落ちた。
そのたびにTさんに「すみません」と謝りながら報告するのだが「また次がありますよ。またいつでも呼んでください」と、がっかりするどころか逆にはげましてくれるのだ。
その一言に、思わず涙が出た。
後に知ったことだが、Tさんは過去にもスポーツをしていて、このときもスポーツ団体の理事を務めるなど、かなり体育会系の人だった。
モデルを見つけるため必死になり、試験では怒られ、何度落ちてもテストに挑戦するその姿に、過去の自分を投影したのだろう。
結果がなくとも、プロセスを知っているから決して怒ることなく、いつも励ましてくれた。
あるときは、テストに受かるよう勝運と強運で有名な東郷神社の「必勝祈願」のお守りまで買ってきてくれたこともある。
その効能もあってか、奈良さんは見事テストに合格した。
残念ながら、そのときのモデルはTさんではなかったのだが、結果がわかるとすぐ連絡をした。
受話器の向こうでは「おめでとう」とわがことのように喜ぶTさんの声。
2人で1つの目標を達成したような、そんな達成感があった。
その後、仕事の都合でTさんは遠方へ引っ越してしまい、今はもうモデルをお願いすることもない。
しかし奈良さんは、今でも営業でカットがうまくいってお客様が喜んでくれると、いつもTさんのことを思い出す。
「Tさんに仕事を覚えさせてもらった」
その思いがあるから、お客様が喜ぶたびに“恩人”の顔が思い浮かぶ。
学んだのは技術だけではない。ひたむきさ、1人のお客様と真剣に向き合う姿勢、“働く”上で大事なことをたくさん、Tさんから学んだ。
不器用で、何度も試験に落ちていた青年が、今ではオーナーも認めるほどお客様から支持を得ている。
シザーケースにはTさんがくれたお守りが今も大切につなげられている。
奈良さんの「原点」であり、「宝物」だ。